ショウタロウが1組の教室の戸を開けるとちょっとだけ女子の顔色が変わります。
どの女子も真っ白な頬を桜色に染めます。
「?」
ショウタロウは小首をかしげます。
彼はこの動作を入学当初から癖のように繰り返しております。
その、小首をかしげる動作もまた愛らしいというお話です。
「よう、ショウタロウ」
一番にショウタロウに話しかけたのはコロコロとした笑顔の少年。
「やぁ、リョウイチ」
ショウタロウは自分の荷物を机の上に起きますとリョウイチと呼ばれた少年の方に向きます。
「今朝は春みたいに暖かくてびっくりしたな」
リョウイチはショウタロウの机に頬杖を付きます。
「そうだなぁ。まだ二月の下旬なのに」
ショウタロウは自分の椅子に座りながら学生服をパタパタ扇ぎます。
「こんなんじゃあ、今年の夏はもたないな」
リョウイチは少しげんなりしております。
「そうだなぁ。そう言えば、アダチを見なかったか」
「アダチ?あぁ、5組のか。見てないな。何か用でも?」
「いや、何もないんだがな」
ショウタロウはちらっと微笑んだ。
「どうした、にやけて。アダチとなにかあったか」
リョウイチは悪そうにショウタロウを見上げ、探りを入れております。
「何かあったらもっとはしゃいでいるさ」
ショウタロウはアハハと笑う。
「ふぅん……。お前は、隠し事がうまいからなー」
二人がそんな話をしていますと、教室の扉が開き、灰色の背びれを着た先生がやってきました。
「皆席につきなさい」
いい慣れた様子で教卓につくと、生徒は皆自分の机へと戻ります。
「えー、今日は……」
先生が今日の連絡をしていますと、ショウタロウは色々と考えを巡らせます。
(こうして話を聞いている時も、視線が気になるな)
ショウタロウは隣の席の女子に少し目を向けます。
女子が、ショウタロウの観察をすることはもはや日常茶飯事であります。
私もこうして想像していますと、となりに美少年がいたら友達との話題になるような彼の仕草を少し探してしまう気がします。
(……気にしないのが一番だな)
こうしていつもと同じ結論に至り、ショウタロウは再び先生に視線を戻します。