私、高校2年生 北条 雪(ホウジョウ ユキ)には表の顔と裏の顔がある。





表は、いつも明るくて笑顔で優しい子。





裏は、ツンツンしていて怒りっぽい子。





もちろん本性は裏の顔。





でもこの裏の顔がバイトで通用する訳が無い。





私のバイト先(スーパー)は接客業なので、笑顔で接しなければいけない。





最初の頃は、慣れない笑顔を4時間も保っていたせいか、バイト終わりはいつも顔の筋肉が悲鳴をあげていた。





でも仕方ない。





地元でアルバイトを募集している所がもれなく接客業だったんだから。





家から遠いバイトなんて論外だ。





バイトが終わったらさっさと帰りたいし。





そんなこんなで、地元のスーパーでアルバイトしてるってわけ。





あー、今日もバイトかー。





そう言えば、今日は新しくバイトさんが入ってくるって店長が言ってたな。





どんな人にせよ、絶対に表の顔を崩さないようにしなきゃ。





そんなことを考えてるうちにバイト先に到着した。





その瞬間、私の中の良い子ちゃんを引っ張り出し、本性を隠す。





そして笑顔でバイト先に入っていく。





「おはようございまぁす!」





私はいつも通り明るく元気に挨拶をする。





「おはよう。雪ちゃんはいつも元気ねえ」





私と入れ替わりのパートのおばさんに挨拶を返される。





元気なのはバイト限定なんだけどね。





ふふっと笑顔を返してからロッカールームに着替えに行く。





着替えを済ませスタッフルームに行くと、見慣れない顔が一つあった。





ああ、この人が例の新人さんか。





暗めの茶色のマッシュヘアで、長身のいわゆるイケメン。





まあ、興味無いけど。





とりあえず笑顔でペコッと頭を下げる。





相手も頭を下げてくると思いきや、ふいっと目をそらされる。





なっ、なんて奴…!





新人のくせして挨拶すらできないのかこいつ!





あー腹立つ!





……おっといけない、本性が出てしまうとこだった。





これから勤務する店員と店長が集まって、チラシのことなどを確認する。





「えーっと、今日から新人の栗原優斗(クリハラ ユウト)君が働くことになります。みんな仲良くしてあげてねー」





店長が新人を紹介する。





「よろしくお願いします」と無表情で栗原さんは言う。





「よろしくお願いします」と他の店員たちが口々に返し、それぞれ仕事に入っていく。





私も仕事に入ろうとすると、店長に呼び止められた。





「今日は栗原君に仕事を教えてあげて」





げっ…まじかよ……と心の中で呟くが、





「了解です!」





と笑顔で店長に返す。





あ、自己紹介がまだだったか。





「北条 雪です。よろしくお願いします」






にこっと笑いかけると、奴は目を合わせることもせず、「あぁ」と言った。




敬語を使え敬語を!!!新人なんだから!!という気持ちは抑える。





「じゃあ、まずは商品の補充の仕方を教えますね」





栗原さんに向かって明るく話しかける。





「あー、はい」だるそうに栗原さんは返事をする。