元治元年十二月



新撰組幹部によって新たな提案についての話し合いが行われていた







「屯所を移転…………か」



土方はふっと鼻を鳴らすと、お茶を飲む



「悪くないだろう?
隊士も増えているし、ここでは狭すぎる」



こんな突拍子もないことをいいだしたのは、もちろん伊藤甲子太郎だ



「ああ、だが……場所がない」



新撰組は当初よりもかなり大きな集団となり、今では百人以上にのぼる



そんな人数を受け入れてくれるところなどそうないのだ






「ありますよ………西本願寺です」







──本当に蓮が言っていた通りか



信じていなかったわけではないが、これで山南と相対することになるのである





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「伊藤参謀は屯所を西本願寺に移転しようと提案してくるはずです」



「それで、山南さんが反対するのか?」



この提案に関して、土方はあまり驚かなかった



土方自身も悪くないと思うからだ



「はい……山南さんはお坊さんを脅してまで屯所を移転することを嫌がるはずです」



西本願寺はもともと新撰組を嫌っているため、長州藩士の隠れ家のようなものになっている


簡単には受け入れてくれないだろう



「それに、土方さんも反対なわけではないでしょう?」



「……そうだな
長州の寝床を一つ潰せるなら悪くない」



「だから、山南さんは自身を追い込んでしまったんだと思うんです
史実では………ですけどね」



今まで一緒に過ごしてきた仲間よりも、伊藤の案を受け入れるという山南にとっては裏切りに近いものがあるのかもしれない



「で、それと山南さんの提案とどう関係があるんだ?」






しかしながら、華蓮という未来人と出会った時点で、山南は史実とは違う人生を送ることとなるのだ