熱い、熱い夏。
目が回るような日光と天敵である紫外線を全身に浴びながら堤防のうえを歩きながらビー玉の入ったソーダーを飲む。
からん。と涼しげな音。
セーラー服が汗でくっついて気持ち悪い。
空はどこまでも青くて腹が立つ。
入道雲がもくもくと立ち上るそこに飛行機雲が無数に走る。
どこかでクジラが嘶き、イルカが跳ねる音がした。
なぜだかセミの声は聞こえない。
だから、とても静かだ。いつもは叫びたいほど五月蝿いのに。
からん。
ビー玉の心地好い音。
太陽に透かしてみればキラキラして綺麗。
まるで宝石みたい。
「だぁぁぁあ‼」
ソーダーのまだ少し入った、ビー玉入りのガラス瓶を海に向かって投げた。
少しだけスカッとした。
『・・・ポイ捨て』
甘ったるような、冷たいような、色っぽいような、重音。
びっくりして振り替えれば銀色の髪をした20歳くらいの青年がいた。
『失礼だな。俺はまだ19歳だ』
ラフな格好、ビー玉みたいな瞳、線の細い四肢、腰に下げた、狐のお面。
『ポイ捨ては禁止だぞ』
さっき投げた硝子瓶が辿った軌跡の先を指差す。
「・・・人間じゃない人に言われてもなぁ」
『お前、失礼だな。俺は人間だぞ』
それはこの1ヶ月とちょっとの夏休みの始まりの日。
私は、絋戸 罪(ひろとの さい)と名乗った。
青年は、梔 ダンテ(くちなし だんて)と名乗った。
◆◆◆◇◆◆
「ダンテ?なに、それじゃあ君は地獄を廻ってきたの?」
『まぁね。そういうことにしておこう』
「変な人。地獄はどんなところだった?」
『地獄は"永遠の"地獄だったよ』
「やっぱり変な人」