携帯のバイブがなる。城田からの着信だ。

折角これからいよいよという時に。自然と声が不機嫌になってしまう。

「どーしたの?中野ちゃん。まさか、ゲームしたくて僕の電話なんてどうでもいいわけ?」

我が家に監視カメラでもつけられたのかと周りを見回してしまう。

「やだなあ、カメラなんてつけてないよー。中野ちゃんキャラメイクした?僕もね終わったの。」

このゲームにはフレンド登録というものがありそれをする事で、遠くにいてもフレンドとはチャットで話せるらしい。

「僕のIDはね…」

一方的に話を進められ辟易しながらも、先輩かつゲームをくれた本人の頼みを断る事は出来ない。

『キャスルがフレンドになりました』

城田だからキャスルか見た目に似合わず洒落た名前をつけたものだ。

意気揚々と早速チャットがくる

「レンジってなにwwwwww」

まさか開口一番名前を笑われるとは思わなかった。

「レンチンのがカッコいいのにwww」

城田のチャットが止まらない。城田さん、静かにしてください。と声を掛けるとキャラクターの名前で呼べと不満を漏らす。

会社にいる時と何も変わらないな。しかし、これもリアルでいいかもしれない。気付くと少しにやける自分がいた。

すぐに落ち合おうと思ったが、どうやらスタート地点が違うようで会えない事がわかった。
合流出来るまで地道に頑張ろうと約束をして、オンラインゲームの初めてのフレンドとの会話が終わった。