勝負の結果は、城田の勝ちだった。

「城田さん、後輩に飯を奢られるなんて悔しくないですか?」

精一杯の皮肉を言ってみるが城田には通じないようだ。

「あ、お代わり、あとねーデザートも食べちゃうねー!」

今月の残り少なくなったこずかいを見つめながら溜息を吐く。まさか城田に食い尽くされるとは思わなかった。

「あ、この後行く営業先なんだけどさ、女性の担当さんなんだってー、可愛いといいね」

この人の頭の中は可愛い女の子しか無いのだろうか。気楽で羨ましい。

「さあ、満足しましたか?行きましょう約束の時間に遅れてしまっては元も子もありませんから。」

又してもメニューに目を落としている城田を無理やり椅子から引き剥がす。ケーキだパフェだと言っていたが、俺は聞こえないようにして店を出た。

警備の営業と聞くとイマイチピンと来ないかもしれない。よくあるセンサーの様な機械を取り付けませんか?という営業だ。
最近では技術の進歩のお陰でかなり安く警備システムを会社に導入出来るようになっている。ホームセキュリティだって5000円を切る事が出来るのだから驚きである。

安全に金を払う時代なのである。

訪問先へは、約束の五分前に着くことができた。道中遅刻しないように城田を走らせた甲斐があった。

「中野ちゃん、わ、脇腹、いた…い」