パソコンの電源を入れて、ドラナイをスタートさせる。

昨日は結局街から出ないで終わってしまった。今日こそは城田のチャットを無視してでも洞窟の封印を解きたい。

「レンジくーん」

まずい、ストーリーが進まない予感がする。

「なんかねー、封印を解けって言われてるんだけど一人だとキツイみたいだよー」

流石にオンラインゲーム。協力しないと厳しいのか。一人でレベルをひたすらあげてクリアしようとしていた俺の計算が打ち砕かれる。

「そうは言っても合流できないじゃないですか!」

「だからね、街で声をかけてみよー!競争ね、早く四人で組んで封印を解いた方の勝ち」

こういう勝負は嫌いではない。わかりましたとタイプすると仲間探しを始めることにした。

街の様子を見てみると、どこかしこで仲間を探すチャットが飛び交っている。
これに乗らない手はない。

「あんたレベル1じゃん。それじゃ無理だよ」

女性キャラが声をかけたようだが、レベル不足を理由に断られたらしい。
そのキャラはしきりに、ごめんなさいゲームをあまりしないのでと謝罪している。

これは、なんかほっておくのも可哀想だな。俺はそう思うと声をかけてみる事にした。幸い俺のレベルも1だ。

「あの、良かったら組みませんか?」

女性キャラはこちらを向くとゆっくりとしたタイピングで、いいんですか?聞き返してくる。

「いいも悪いも、俺もレベル1だし、断られるの怖いからw」

と、少しおどけて見せると、安心したのか、よろしくお願いしますと飛び上がる仕草をしてみせた。

彼女いや、実際は性別は判らないがキャラの見た目で判断する。
彼女の名前は「セツ」という、小柄で髪の長いエルフのようなキャラクターだ。

組めたことで自信を付けたのか、セツはあっという間に3人目と4人目の仲間を見つけてきた。
3人目は「たける」自己紹介やいなや、俺の本名だから気軽に呼んでくれよ!とネットに対して恐怖は無いのかと感じる豪快さがあった。

4人目は「アリシア」明るい性格なのだろう、しきりに盛り上げ、ボケ、突っ込むを繰り返していた。彼女が一番オンラインゲームに慣れていそうだ。

「ところで、四人集まったけど、レベルはどうすればいい?」

俺が尋ねるとアリシアからすぐに返事が返ってくる

「んとね、封印の洞窟なら5位でいーんじゃないかな?あっという間に上がるよー!」

全員1なのにあっという間の根拠はどこにあるのだろうと思ったが、アリシアを信じる事にした。

「なあなあ、武器は?俺は出来たら素手が良いんだがな」

「だいじょーぶ!素手だってスキル次第で強くなるよっ!そのままゴーゴーだよ!」

リーダーはアリシアでいいだろう。すべて任せて安心出来そうだ。

四人は思い思いの装備をし初めての闘いへと向かった。
街から出る直前アリシアが言った。

「リーダーはレンジさんね!だって一番まともそう!私はチャチャ入れるのが好きなだけだから、決して目立ちたくないんだ♪」

不思議と悪い気はしなかった。