「ついたぞ。」
イサムは車を停めた。
バンッ!
ドアを閉める音が辺りに響く。
 アキラから急に呼び出しがあり、俺達は急いで駆けつけたのだ。辺りは暗く静かで俺達を何処か不安にさせる。
 肝心のアキラが居ない。
「おい。アキラはどこだ?イサム、電話かけてみろよ。」
 イサムが電話を鳴らす。着信音は意外にも近くから鳴った。
 音のする方に目をやる。物陰から手が出ていることに気付いた。様子がおかしい。用意していたナイフを手に持つ。
「イサム。気を付けろよ。」
 慎重に近づく。暗がりでなかなか姿が確認出来ない。
 俺は後ろのポケットから携帯を取り出した。
 携帯で暗がりを照らすと現れた顔、それはアキラだった。
「アキラ!大丈夫か!?」
 アキラに駆け寄る。アキラの顔面は半分潰れ、見事にぺちゃんこだ。服は血まみれで、体はピクピク痙攣し、鼻から黒い塊が出ている。意識はない。呼吸はイビキをかくみたいにゴーゴーなっている。危険な状態なのは一目瞭然だった。
 救急車を呼ばないと!汗が一気に出て来た。携帯を操作する手が震える。
「はい。救急センターです。」
冷静さがムカつく。
「けが人がいる!早く来てくれ!」
苛つきながらも場所を伝えると、俺は電話を切りアキラの方を見た。イサムもアキラに駆け寄っていた。

静かだった辺りがざわざわし始める。そのざわざわとした空気が、何故か俺の記憶を呼び起こした…