卵黄と白身を分ける。
 からざを捨てて、ガラスのボールの中で卵黄を解し砂糖を入れて混ぜ始める。
 カチカチというホイッパーの当たる音が台所に響く。
 友人の恵子は、攪拌機を使ったほうが楽だというが、私はいつも手作業だ。
 手で混ぜた方が美味しくなる。
 そんな迷信を信じているからかもしれない。
 一年ぶりだとすぐに腕が痛くなる。
 来年は、もっとお菓子作りをしよう。
 そう思いながら混ぜていたが、去年も同じ事を考えていた事も同時に思い出していた。
 卵黄の付いたホイッパーを洗い、今度は白身の方に手をつける。
 彼はそろそろ目を覚ましただろうか。
 これが混ぜ終わったら、メールをしてみよう。
 携帯電話が鳴る。
 混ぜながら隣の部屋に移動して、コタツの上にボールを置き、携帯電話を手に取る。
 恵子からのメールだった。

『メリークリスマス☆
 今、由紀たちと飲んでるよ。
 お前も来い!!』

 ここ数年私達の間では、彼氏とクリスマスを過ごすのはダサいという変な風潮がある。
 クリスマスは特別な日じゃない。
 ではなく、いつ別れるかわからない男と過ごすより、ずっと一緒にいるであろう友達と過ごす事の方がクリスマスとして相応しい事だというコンセプトだ。 それは多分、結婚適齢期という年齢を過ぎた女たちの今まで過ごしたクリスマスに対する諦めのようなものも含んでいるのかもしれない。
 だとしたら、結局彼女達は今でも素敵な彼氏とのクリスマスを望んでいる事と何ら変わらないのだ。