しばらく黙って歩いていると
男が急に口を開いた。

「ここの桜を見とけ」

顔を上げるとそこには満開の桜が咲いていて、美しく舞っていた。

「うわぁ…綺麗…」

男はあたしの言葉を聞くと言った。

「お前は目の前の大門をくぐったら最後。出れるのはいつかわからない。もしかしたら死ぬまで出れないかもしれない…だからこの桜を忘れない方がいい」

それを聞いてようやく吉原の大門に着いたことを知った。
あたしは最後になるかもしれない桜を目に焼き付けて

「行こう。」

と言った…