バスの振動が妙に気持ち良い。



窓越しに見る桜もかなり綺麗だ、悪くないな。



俺はつい3日前にこの街に越してきた、いわゆる新参者である。

そしてこの地域の自分に見合った高校に転校した。

その転校初日のバスに今乗っている




『次は、南田高校。南田高校。下車する方は、お手元のボタンを押してください。』


学生の1人がボタンを押すと一斉に立ち上がる学生達。

無論、俺も行く。






「ねね、あの人誰だろ!?ちょーイケメンじゃないっ!?」

「やば!!イケメンすぎでしょ!」

「誰だあれ、転校生か?」


至る所で俺の噂。

全く良い迷惑だ、HRが始まればわかることなのに…





「射手島匠くんだ!皆、仲良くするんだぞ!」

「よろしく、お願いします。」








「ねぇ、匠くんは前どこ住んでたの?」

「匠くんって、たくみって書いてしょうって読むの!?珍しーい!」

「射手島!今日歓迎会とかしたいんだけど!」

「だって!射手島くん、いこうよ!」



「あ、有難いんだけど…実はまだ引越しの片付けができてないから、今日は行けないんだ。誘ってくれてありがとう。」

「そうかー…残念!また今度な!」

「うんうん!また今度やろうね!射手島くん!!」


すごい群がりようだな。

転校生ってこんなに人気あるのか?

まぁ一瞬だし、しばらくすれば静かに過ごせるだろう。


それまでの辛抱「射手島!!!!!」

「な、なに?服部君。」

「ちょ、お、お前っお前を!お前のことを!えっえと、」

「落ち着いて、服部君。」

「二階堂さんが!!!」

「二階堂さん?」

「えっうそ!あの二階堂さんが…!?」




「呼んでるから、早く行け。射手島。」

「あ、あぁ。」










「へぇ、貴方が射手島くんかぁ!」

「自分でよんどいて顔もわかりませんか。」

「まぁ、そうピリピリしないで!実は頼みたいことがあるの!」

「頼みたいこと?」

「えぇ、そうよ!落ち着いて聞いてね!」

「貴方よりは格段に落ち着いてますよ」

「えーとね!貴方に…



院長を務めて欲しい。」



「バカですか?俺は普通の男子高校生です。確かにこの学校はバイトOKですが、院長はムリです。ムリがあります。」

「ねぇ、一生のお願いよ。」

「簡単に一生のお願いを使わないでください。失礼します。」

「待って!!!お願い射手島くん!私と患者を助けて!」

「患者を助ける?」

「貴方しか、いないの。もう。」

「さっき知り合ったばかりのヤツによくそんなこと言えますね。」

「お願い、貴方にしかできないことがある。」

「…見に行くだけ、決めるのはその後です。」

「ホント!?」

「聞こえませんでしたか。」

「いいえ!聞こえているわ!ありがとう!!」

「もう一生のお願いは使えませんからね。」

「わかってる!で、でも。引越しの片付けは良いの?」

「そんなものありません。あの場を切り抜ける出任せですから。」

「そっかぁ!!」



なんだか、気の狂う人だ。



それより、院長とはどういうことだろうか…?