「甘えんぼさんだなぁ、ヒヨは」

そういうと、蓮くんはグイッと私を引き寄せた。


「僕の秘密の場所に案内するよ」

耳元で、そう囁く。



それだけで、心臓が跳ね上がる。



蓮くんは、私の手を掴んだままお祭りの喧騒を抜け出した。

どんどんと家の方向に歩いていく。


そして、家に到着してしまった。

玄関は使わずに、裏口から蓮くんは中に入った。

そこには、ひっそりとした廊下が続いている。


「ここは僕専用だから」

そのまま、手を引っ張られる。


見覚えのある部屋の襖。

蓮くんの部屋だった。


だけど、部屋とは反対の、階段を昇って行く。



ドキドキする、始めての場所。


階段の上は真っ暗だけど、慣れた足取りで蓮くんは進んで行った。


しばらく歩くと、また階段。


蓮くんは、私に気を遣ってか…ゆっくりと昇ってくれた。


着いたのは、月明かりがよく入る小部屋だった。



「ここが僕の秘密の場所だよ。だいたい階段は、誰も昇らないから。
 暗くて見えなかったと思うけど、この階段は隠し階段になってるんだよ」


そう言って、蓮くんは階段を部屋の中に引き上げてしまった。


「ね?これで二人きりだよ。」