あ……
 今、手を握られてる?

「ほら!ちゃっちゃと歩く!
 遅刻は減給対象やで!」

「わかってますよ」

 俺は、自分の席に着くと一呼吸置いた。

 笹山さんとは同じ部署だった。
 今まで気づかなかった。
 笹山さんごめんね。

 俺は、心のなかで謝った。
 まぁ、心のなかで謝っても伝わらないんだろうけど……

「おい。
 さっき笹山ちゃんと一緒にいたよな?
 仲いいのか?な?な?な?」

 菊池は、そういうと俺のわき腹をつついた。

「そんなんじゃないよ……」

「昼休みは、その話題で持ちきりだったぞ?」

「とりあえず、否定しておいてくれ」

「お前最近、モテモテだな?
 この間、辞めた橘さんに笹山さん。
 どうして、社内の可愛い所ばかりお前の元に行くんだ?」

「可愛い所?」

「お前知らないのか?
 橘さんは、社内一可愛い女子社員だったんだぞ?
 で、その次が笹山さんだ。」

「へぇー」

「『へぇー』って、お前なー
 感心ないのか?」

 挨拶すら、キチンと返してもらえないしね……
 それで、関心なんてもてるはずない。