今ももにゃもにゃ喋っている声が聞こえてくるが、細かい単語までは聞き取れない。

 さっきの告白ぐらいはっきり喋ってくれればいいんだけど……っていうか、今ここに俺以外誰もいなくて本当によかった!

 学校という場所だけあって、どこで誰が聞いているかわからない。

 現に俺がここで聞いてしまった。

 慌てて左右の廊下や階段の下を確認するが、蟻の一匹いなかった。

 俺が聞いてしまったが、まだマシだと我慢してもらいたい。

 青山が告白されているのものぞいていたし、俺ってけっこう性格が悪いよな。

 篠塚も置いて逃げたし。

 さっさとここから立ち去るのが一番かもしれないが、立ち去らず階段に腰掛ける。

 なに喋ってるかぜんぜん理解できていないのだし、誰か来ないかという見張りの名目で勘弁してもらいたい。

 腰かけて一息ついたその時、見張りの名目が過ちではなかったことを思い知る。


「圭一、そんなところでなにしてんだ?」


 その声に振り返ると、廊下の奥から青山がやってくるところだった。