違うとは言えなかった。

 青山のことが好きだと言えなかったことと同じように、言えなかった。

 私は舞が好き。

 今でも舞が好き。

 それは変えられない事実で、舞を好きだと思ったことが同性愛で、レズビアンであるというのなら、私はそうなんだろう。

 でも、はっきりとそうだと言えなかった。

 口をつぐんだまま、声が出せない。

 恥じるようなことじゃない。

 疎むようなことじゃない。

 私はなんにも悪いところなんてない。

 そう思うのに……

 三人の眼差しが、私をすくませる。


「へえ〜、黙ってるってことは、マジなんだ」

「うわあ、キモっ」


 侮蔑の眼差しが注がれる。


「女が好きって事はさ、こんなことされても嬉しいわけ?」


 再び肩を押され、足を蹴られ、トイレの床に伏す。


「うっ……」


 腹の上に肩膝をつかれ、体重が圧し掛かり息が詰まる。


「あははっ! ちょっとそれ、マジでシャレになんないって〜」


 止める気もない制止の声が、楽しそうに響く。


「アンタ、気持ち悪いのよ」


 薄ら笑いを浮かべた相手の手が、顎を掴み親指が食い込む。

 加虐的なその笑みの前で私は無力だった。


「死んでくれる?」


 振り上げられた手が下りてくるのを、私はぼんやりと見上げていた。