部屋のあまり使わない固定電話が鳴り響いた。

ちょうど、大学のサークルから帰ってきた瀬織詩音(せおりことね)は受話器をとった。

「はい。もしもし。……お母さん?」

電話の相手は離れて暮らしている母親だった。

実家はここからバスで行ける距離のわりと近い所にあるのだが話す内容もないため、あまり実家には戻らないし、電話もしない。

久しぶりの電話なのに、母から言われた言葉は詩音にとって信じがたいものだった。