「そこに新しい小袖用意しといたからそれを着るといいよ」


お父さんが指をさしたほうに目を向けると

部屋の片隅に薄ピンク色の小袖が畳んで置かれていた



小袖?

小袖って昔の人が着てた和装で…

今は平成であって…?



「ね、ねえ、今って何年だっけ?」


聞かずにはいられなかった

聞かないといけない気がした



そう問うとお父さんは

不思議そうな顔をして首を傾げた

そして当たり前かのようにこう言った


「文久3年だよ」