6月下旬。

入学式も終わり、慣れない高校生活に慣れてくるこの時期。


私は青葉高校に転入する。


朝、重い体を起こして新しい制服に身を包む。


赤チェックのスカートにリボン。

とりあえず可愛いから気に入っている。


「おっ、柚制服似合ってるじゃん!

かわいー!」


リビングに出ると、一緒に暮らしている兄の戒がコーヒーを飲んでいた。
シスコンらしい。


「お兄ちゃんもカッコいいよ。」


そう言う私も、ブラコンらしい。


らしいって言うのはお兄ちゃんの友達がよく言ってるから。

ブラコンじゃなくて普通だと思う。


たった一人の大切なお兄ちゃん。

大好きに決まってる。


「少し遅れたけど、柚もついに高校生か。友達作れよ?」


「そだね。」


友達なんて作る気ないけど。

お兄ちゃんに心配を掛けたくなくて、私は思ってもないことを言う。


「じゃあ、行ってきまーす」


「ん。気をつけてな!
いってらっしゃい。」


歩くこと20分。


歩いても行ける距離にある青葉高校は、偏差値も校風も至って普通の高校。


あえて言うなら、他の高校より校則が緩いことくらい。


学校が近づくにつれ、同じ制服を着た人が増えていく。


学校内に入ると、何故かたくさんの視線を感じる。