薄暗い自室で、私は一人、部屋の中で静かに座っていた。

そんな私の目の前にあるのは、師匠の刀と龍馬さんの懐中時計。

記憶を取り戻した今。

私は決断しなければならない。

師匠か龍馬さん。

どちらの為に限られた時間と命を使うかを。

「今のままじゃ、ダメなんだ……」

あやふやな立場をやめないと、また心が迷ってしまう。

目を閉じて、今までの思い出を本のページをめくるように思い出すと、胸が切なく痛み、頬を一筋の涙が伝った。

瞼を開け、再び刀と懐中時計を見る。

もう……答えは決まってる。

手を伸ばし、懐中時計を手に取る。

鎖が揺れる音と共に、銀の冷たい感触が掌に広がった。

ギュッと懐中時計を抱きしめ、立ち上がる。

部屋の戸を開ければ、春の終わりを感じさせる生温かい風が身体を吹き抜ける。

天を仰げば、全体を灰色の雲が覆っていた。

すぐにでも空が泣き出しそうだ。

「今の私みたい……」

ポツリと呟くと、私は怠い身体を懸命に動かし、そっと屯所から出た。