涼太side


文化祭…つまり理沙が俺をかばって死んでしまった日から一ヶ月たつ。


もうすごい昔のようにも感じるが理沙とふざけあっていた日が昨日のようにも感じるから不思議だ。


そろそろ理沙の死に向き合わなければならないと思って図書室に行こうと思っている。



なんでアイツが死なないといけなかったんだ。
俺なんか庇って。
俺が死ねばよかったんだ。


あれからずっと思っている。


最初はただのうるさい奴だと思ってた。
でもとてもいい奴で。

気づいたらいつも理沙を目で追うようになっていた。


あれはいつだったかお忘れたけど、理沙のいってくれた言葉でもう少し頑張ろうかなって思った。


『あなたはいい人だよ。
だってすぐに謝ってくれた。
それに、優しい。
みんなは外見で怖いっていってるけど、本当はすごく優しいよね。』


学生時代で初めてだった。
俺を優しいなんて言われたのは。
目つきが悪いせいか中学校のときから恐れられていた俺が優しいなんて。

幼稚園の先生にお世辞で言われたとき以来だと思う。

だからその言葉で頑張れた。


なぁ、聞こえているか?
俺はずっと好きだったんだよ。
迷惑だと思うけど。



届かないということがとてつもなく虚しいことを知った。

なんで文化祭の前に言えなかったんだ。


俺には後悔しかない。






図書室は理沙がいたときと何も変わらない。




いつも理沙が座っていた席に待っていたかのように本が置いてあった。




理沙が好きだった『バウムクーヘン』が。