病院を後にすると、俺は花音の家の車に乗せられてマンションに帰って来ていた。


「おい、姉ちゃん。そっちは海司ん家だよ。うちはこっち」


おっと、そうだった。


花音の家は隣だった。


ガチャンとドアを開ける花音の父ちゃん。


花音の家族に続いて俺も家の中に入った。


そう言えば、花音の家にあがるのは初めてのような気がする。


へぇ…。


同じマンションでも、間取りがちょっと違うんだな。


俺の家とトイレの位置が逆だ。


長い廊下を通り抜けると、花音の家のリビングへと入った。


「さすがに今日は疲れたよ。お前が目を覚ますまで、気が気じゃなかったからなあ」


そう言っておじさんが、椅子に腰を下ろした。


「買って来たお弁当、食べちゃいましょ。

ほら、花音も蒼太も早く座りなさい」


おばさんに言われるまま蒼太の横に座ったけど、俺は目の前の光景にギョッと目を見開いていた。


なんなんだ?このダイニングテーブル。


書類やら本やらお菓子の箱やら調味料やら。


なんで食事するテーブルにこんなものが一緒に置いてあるわけ?


よく見ればこの部屋……。


脱いだ服は脱ぎっぱなし。


床に物がゴロゴロ転がってるし。


ここ、本当に人が住む家?


「花音、顔が真っ青だけど大丈夫?」


「え…?」


自分の発した声にビックリした。


これは間違いない。


花音の声だ…。