街の夜空は青白くて
星は容易く見つからない

夜空にネオンが反射する中
辛うじて
薄く輝く星を見つけるも
願う気がしない

いや、叶う気がしないのだ

月はそんな私を
嘲笑うかのように
薄っすらと弧を描く

そんな月に恨み言を言っても
仕方なく

ただそこにいるだけ

なにも変わらない
なにも変えない

手袋を忘れた事を
大袈裟に嘆くも

ポッケに両手を突っ込み
歩く事は嫌いでは無い

キャンディの一つでも
出てはこないか

白い息はやはり白いままで
煙草の煙に見えたのは
いつの事やら

そんな頃もあったっけ?
と胸に広がる記憶

変わったようで
変わらない日常

変わっていないようで
大きく変った状況





ーーー少し長居しすぎたか




夜道を歩きながら
そんな事を考える

背中のリュックには
母に持たされた大量のみかんと
食料品

老いると重さに対しての
感覚は無くなるのか?

そんな事を思いながら
ズッシリと感じるリュックを
背負い直す

帰り道を辿りながら
家で待ち侘びる子らを思い
娘の顔から母の顔となる自分に
スイッチを入れ直し

今一度
空を見上げる

やはり街の夜空は青白い

だけどーーー

願ってみようと思う

それは白い息のマジックか
はたまた大量のみかんの重みが
そう思わせるのか

薄っすらと光る星に願いを
弧を描く月に安らぎを

変わらぬ明日がまた
訪れますようにーーー

月のクスリと笑う声が
聞こえた気がした

こんな夜も悪くない






冬の夜道のこと