「あゆ…?」


光汰が口を開いた時、聞こえてきた声は忘れたくても忘れられない人のもの。


いないと思ったら…後ろの方に隠れていたのか。


チラッと麗を見ると、あいつに気づいたのか青ざめ、その小さな体を震わせていた。


「麗、おいで」


「…麗、行くよ」


玲也に連れられてゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。


私のところまでやってくると、私の背中に身を隠し、服の裾をぎゅっと掴んだ。


私は安心させるように微笑む。


「大丈夫だよ。もうすぐ悠里がくるから。それまで私の後ろに隠れてて?」


こくんと頷くのを確認してから、あいつに視線を戻す。


「ゆー君?あいつと知り合いなんか?」


「…あいつは秋月 修平(アキヅキ シュウヘイ)。私たちの幼なじみだよ。そして、轟の総長」


2つの真実に、動揺を隠せない白龍。


白龍とは反対に、修平はニコニコとずっと笑っている。


いつ見ても気持ち悪い笑い方。


私は出会った時からずっと、修平が嫌いだった。


…いや、あの〝笑顔〟が嫌いだった。