「……別れた?」


アキが持っていた文庫本から顔を上げる。

「え、数日前付き合ったって言ってなかった?」

「三日前」

「で、いつ別れたの?」

「昨夜」

三日坊主にもなってないじゃん、と言わずもがな、アキが口にしたいことはわかる。わかるけれども。

「…最短記録更新おめでと」

「嬉しくないしおめでたくなーい」

「で、ふったのふられたの?」

アキさんはあれだ。人の不幸は蜜の味の如くあたしの別れ話に食いついてくる。
唇を尖らせて爪に目をやる。

昨日塗った所が少し剥げていた。