Act,7【雪菜視点】








「馨先輩…」



周りには大勢の客がいるのに、
ここは何故か二人だけの世界になったような気がした。


雪菜は、真っ直ぐに馨を見つめる



「やっぱり……羽鳥と一緒がよかった…?」


「え?」


(何故先輩、そんな悲しそうな目で笑うの……?)




「そんな事無いですよ!
私は先輩とこれて良かったって思ってますよ!」


「だけど、雪菜ちゃんは無意識に、羽鳥を探しているね?」


雪菜は息を飲んだ。
(見透かされてる…?)





確かに今さき、通行人にぶつかった人が、羽鳥かと思った。



「いや、それはただの勘違いで」





雪菜は馨から目線を外す。



すると、その瞬間あごをつかまれて、
馨の方を向かせられる。



「え、馨先輩――――――」





「他の男の事なんて、見ないで。
――――俺は、雪菜ちゃんが好き」

先輩の顔が、近付く。




「せんぱ―――」



い、と言いかけた瞬間、唇にあたたかいものが触れた。



(先輩と、私、キスしてる…!?)



道行く人から、視線を感じる。
雪菜は驚きと、馨から伸ばされた手で、動くことができない。






―――長い、長い、キスだった。