その日の夜
早めに夕食を済ませて、自宅から2つ家を挟んだ所にある湊くんの家に行った

テスト期間はいつも勉強を見てもらっていた




「おじゃましまーす…」

「あ、やっと来た。先に部屋上がってて!
飲み物持って行くから。」

「うん、ありがとう」



階段を上って突き当たりの部屋
行き慣れた湊くんの部屋だ


湊くんの両親は海外出張の多い仕事で
ほとんど家に居ない




「はい、茜。ホットチョコ好きだよね」

「ありがとう!あ、この上にかかってるのって…」

「ラズベリーソースだよ。アレンジで入れてみたけど、どう?」

「んー、あまい!おいしーっ」

「よかった」



実は言うと、今日のクッキーの事もあったし湊くんの家には行きづらかった

でも、やっぱりこんな優しい人がするはずないよね



「さ、数学Ⅰだっけ?範囲広いんだろ?」












「こっちの√とこっちのを掛けるんだよ」

「そっか!わかった」



一時間半くらいたっただろうか
湊くんのお陰で大分片付いてきた


「今回の数学も湊くんのお陰で赤点免れそうだよぉ~」

「あたりまえだろ。家庭教師してあげてるんだから。」

「あ、そういえばリサも家庭教師付けてるって言ってたなぁー。その分私はタダだからお得っ!」




リサの話をして、ハッとクッキーの事を思い出してまった



後ろに立っている湊くんは
私の頭の上に手をおいて



「それなら茜から授業料でも貰おうかな」


と言いながらくしゃくしゃと頭を撫でた












「ねぇ…湊くん。今日貰ったクッキー今持ってる?」





湊くんの頭を撫でる手が止まった




自分でも何でこんな事聞いちゃったのか分からない





「何で…そんなこと?」


何時もより声がワントーン低い気がした


「いっ、いや、クッキー美味しそうだったから私も食べたかったなーみたいな?」



急いで取り繕って付け加える
振り返って見ると湊くんは笑顔で


「あぁ、もう食べきってしまったからないんだ。」

「そ、そうなんだ!やっぱ食べきるって事は余程美味しかったんだねっ。」

「そんなに食べたかったんなら、俺が今度作ってあげるよ」

「えっ、湊くんが?」

「うん。楽しみに待ってて」




そして9時になると湊くんの家を後にした


やっぱり捨てたのは湊くんじゃないよね


でも何かが引っ掛かった

あの頭に置いた手から感じられた圧力から





家に帰って部屋に入るとリサからメールがきていた