「くそっ!!」


ガンッ


誰も通らない路地でムシャクシャした気持ちを沈めるために壁を殴った


何度も何度も……


それでも納められない気持ちとは裏腹に右手に痛みが走る


血が流れて骨にジンジンと響く


折れてはいないだろうから、殴るのを止めて壁にもたれズルズルと座り込んだ


流れる血を押さえずにそのままにした


あの時、浩輔に見透かされたような気分だった


以前は話しかける度に俺に対してどこか引け目を感じていた事はわかっていた


あぁ…コイツ、俺に苦手意識持ってるな、って


それで充分だった


逆らわない、余計な事に首を突っ込まない


その距離感に密かに安心していた


だから…怖かった


しかも弱みを握られている事もバレてしまった


だから、関わるなと言う意味を含めて本気で殴ってしまった


今すぐにでも謝りたい


……でも、アイツはそれを許さない