部屋に戻るとさっきまで我慢していた涙が溢れてきた。ベッドに潜り込みいつまでも泣いた。

結局朝まで眠ることも出来ず、重い頭を起こして支度をする。食欲なんてもちろんなくて春兄にも顔を合わさず
病院へと出勤する。

「実緒ーおはよう。あれ?顔色悪いよ。大丈夫なの?」同じウサちゃんルームの保育士でみなみちゃんが声を、
かけてきた。

「おはよー。みなみちゃん。昨日ちょっと眠れなくてね・・・。でも大丈夫!!ごめんね心配かけて」

「でも、無理しないでね。なんだったら和也先生か、春斗先生に診てもらったら?」

「うん。ありがとう」さて、頑張らなくちゃ!!でも、引越しの準備もしなくちゃだし・・。和也にはなんて言おう
かな・・・。と思っていると和也が顔を出した。

「おはよう和也・・。あのね・・・。後で話があるんだけど・・・。いいかな。」

「あっ!和也先生おはようございます。実は実緒が調子わるいみたいで・・・。」とみなみちゃんがニッコリ。

「えー!!大丈夫!平気だから・・。そんなことよりも和也は夜勤明けでしょ!!早く帰って休まなくちゃー。」

慌てて帰そうとすると腕を掴まれてそのままヒョイとお姫様抱っこすると。

「宮川さん。ごめんね。ちょっと実緒借りてくよ」と言うとそのまま空いている処置室へ連れて行く。

「和也〜下ろして恥ずかしいよ〜。大丈夫だから!ねぇてばー!!」

「暴れるな!落とすぞ!!この方が速いから・・。」

処置室のベットに下ろすと血圧を測る。体温計を脇にはさみ聴診器をあてる。

「熱はなさそうだな・・。しかし、なんだこの血圧の低さは?ちゃんと寝てるのか?この間の血液検査の結果見たよ

貧血もあるし、栄養もちゃんと取れてないみたいだな・・。兄さんも心配してたぞ」

「だって・・・。」目をそらし横を向く。

そんな実緒をベットからゆっくり起こして抱きしめる。

「ごめんな。俺はまだ研修医だから、なかなか一緒にいることが出来なくて・・。淋しい思いさせてるよな」

「大丈夫だよ!春兄もいるし、みなみちゃんだっているしだから・・・。」そこまで言うと和也から離れて、

「じゃあ、仕事にもどるね」と駆け出した。これ以上そばにいたら別れられなくなる・・・。

その姿を麗は見ていた。「あの女、邪魔だわ!!」