「そっか。ならいいや」



黒い笑みの主は私の肩を抱き、プレハブの扉を開ける。

暗闇に浮かび上がる、1つのライトが派手なエンジン音を立て、まるで威嚇する様に唸っていた。


「麻衣!?」


そこに立っていたのは、予想どうり祐也。だけど……


「原嶋てめえ!何かしてねえだろうなぁ?!」


あんなに怒りを露にする祐也を。
私は学校で見たことがない。

怒鳴り声を上げ、目はつり上がり、雄大の名を口にする祐也はまるで別人。


「美舞の連中は、響を除いて血の気が多い奴ばっかだな」

ポツリと口にした雄大が私の背中を、軽く押した。


……祐也の所に行けって、意味?

雄大が口にした――――びっぷ、って何?


振り返り、雄大を見るとニコリと微笑む。

笑みに肯定の意味を受け取り、ガラの悪い人達から浴びる視線を体に浴びながら、祐也の元に近づいた。


私が近くに寄ると、威嚇の表情から一変。

不安そうに眉を曲げた祐也は、


「お前何もされてねぇか……?」


恐る恐る手を伸ばす。
肩に祐也の手の温もりが届いた私は、固まりきった体を少しだけ解放したかに思えた。