同じマンションだという拓也君の部屋は、私より一個上の階にあった。


「お、お邪魔しまーす…」

「あはは、そんなに緊張しなくても」

「いやだって、他にもしかしたら人がいるかもしれないし…」

「居る訳ないよ、一人暮らしなんだから」

「いやだからこそ誰でも呼び放題な訳だし、もしかしたら拓也君にこっそりサプライズを、なんて事も…」

「サプライズ?」

「ほら、何ヶ月記念!とか若い子はするでしょ?もしかしたらマメな子が用意してて今日がその記念日だったりするかも…」

「…それは友達同士の話をしてるって事だよね?」

「え?いや、ちが……も、もちろんだよ!別に向こうが女の子でも彼女だと思ってても拓也君にとって友達は友達だもんね?まぁ、友達記念もありだよね!」

「…はぁぁ…」


わぁ、なんて大きな溜息ですこと!


「あ、あはは、そうだね。友達記念は…ちょっとやり過ぎかな?」

「……」


そして、完全に物申した気な拓也君の視線が刺さる。痛い。残念ながらもう、彼は完全に不機嫌様になってしまったようだ。