これは、わたしがメガネをかけていない小学生のころ。
「もう、遅刻しちゃうよ兄さん!」
「おー、ちょっと待て。あと一分」
「はーやーくーっ!!」
むぅ、とむくれて兄さんを待つ。
宣言通り一分後に兄さんは来て、悪い悪い、とわたしの頭を撫でた。
いつもこうやって流されちゃう……
でも、わたしよりも高い兄さんの体温。
それが大好きで思わず顔が緩んでしまう。
「うし、行くか」
「うん!」
手を繋いで仲良くわたしたちは家を出た。
兄さんの通う高校は、わたしの通う小学校の途中にある。
だからいつも一緒に行っているんだ。
「あ、ナルちゃん!」
コンビニの前で野菜ジュースを飲んでいるナルちゃんに手を振ると、向こうも気づいたように手を上げた。
そのままこちらに来て、眠そうにあくびをする。
「おはよー」
「おはよう、ナルちゃん。眠そうだね」
目を擦っている姿はまるでお昼寝後の猫みたい。
ちょっとかわいいな。
「んー、昨日夜更かししたの」
「夜更かしは美容の敵なのに?」
ナルちゃんは結構美意識高いと思ってたんだけどな。
つまり、ちょっと意外だった。
「うん。これから気をつける。
りっちゃんも気をつけないとダメだよー?」
ぽん、と頭に手を置かれて。
兄さんと言いナルちゃんと言い、頭を撫でるのが好きなのかな。
わたしは別に好きー、だからいいけど。