放課後、人がまばらになった教室で名前を呼ばれて振り返ると、一ノ宮くんと枢くんが立っていた。



「どうしたんですか?」



何か用事でもあるのかと聞いてみると、枢くんがニッコリと笑った。



「白崎さん、これから時間ある?」


「これから、ですか?」



ご存知の通り、わたしの日常といえば家に帰って部屋にこもってひたすらに好きな声を聞くという。


つまり、暇なことこの上ない。



大丈夫だと言うと、嬉しそうに笑う枢くん。


そんな枢くんを不思議に思い、一ノ宮くんに目を移す。



「カインが、お前が暇なら記念として放課後遊ぼうってさ」



苦笑ぎみのその声に、またボーッとしてしまいそうだったけど、なんとか自分を保つ。



あぁ、でも素敵な声。



「でも、遊ぶって……?」



自慢じゃないがそういうことには疎いわたし。


申し訳ないです。


いったいどこで遊ぶのだろうか。



「さぁ、いつもカインの気分だからな」



そうなのか……



「ほら、恭も白崎さんも行くよ!」



どうやら行く場所が決まったらしい。


学校では見せないような子供っぽい笑顔と、弾んだ声でわたしと一ノ宮くんを呼ぶ。


そんなことが慣れなくて、くすぐったくて、温かくて。


自然と緩みそうになる頬を押さえて、わたしは一ノ宮くんと枢くんのあとを追った。



向かっているのは、どうやら一ノ宮くんと枢くんの行きつけのお店らしい。


昔からそこに集まって何かしらしていた、とか。


お店に着くまでに、わたしは枢くんと一ノ宮くんの話をいろいろ聞かせてもらった。


二人は中学からの友達で、同じクラスになって意気投合したとか。


それから(枢くん曰く)ずっと仲よしらしい。

(一ノ宮くん曰く腐れ縁だけど)