その日からナーちゃんは文がバイトの時には必ず通用口で文が出て来るのを待っていた。


今ちゃんや私は別にナーちゃんが居ても気にしてなかったが、元木さん達は次第に私達と距離を置く様になっていた。
それが何故なのか私には分からなかったので、通学の時元木さんと同じ電車に乗ったとき聞いたのだ。

ラッシュの電車の中頭一つ出る位大柄な元木さんと頭一つ低い私が走る電車の中ボソボソ話始めた。


『ねぇ。元木さん。最近私達の事避けてるでしょ?ナーちゃんの事で?』


元木さんは私が他の乗客に押されない様に私をドアの所に立たせて、両手で空間を作ってくれながら答えてくれた。


『ぶっちゃけ、そうだな。俺達あの子が平気な顔でメット盗む所見たんだよ。盗みをする奴を俺は許せない。』


私は驚いた。
その顔を見て、元木さんが私が何も知らなかった事を気付いた。
『何だ!?知らなかったのか?』


私は元木さんの顔を見上げて頷いた。


元木さんは続けて私に言った。
『俺は、そんな奴と一緒に居たくない。だから、離れたんだ。お前はどうするんだ?』


私は元木さんのその言葉に返事をしなかった。
沈黙が続いた。
電車は私が降りる駅に到着した。


私は元木さんの空間からスッと抜けて無言で電車を降りた。
閉まる扉の向こうに元木さんが私を見ていた。
私も元木さんをジッと見ていた。


電車は少しずつ速度を上げて走りだした。
私は電車が見えなくなるまで、その場に立っていた。
決断の時がやって来た。