〝ガチャ〝

「ただいま。」

玄関を開け梨華の父の浩輔が帰ってきた。

「おかえりなさ…」

梨華が目の前にしたのは

若い女性を連れている浩輔の姿だった。

「お父さん…?」

梨華は聞く。

「今日からこの人、沙絵子さんがお前たちの母親だ。」

浩輔はそういい梨華の前を通り過ぎた。

「あなたが梨華ちゃん?浩ちゃんからよく話は聞いているわ。
これからよろしくね?」

沙絵子はそういい梨華に握手を求めた。

「あ…はい…こちらこそ…。」

梨華はその手を取り握手をした。

〝ズキッ…〝

「いたっ…」

痛みに思わず沙絵子を見たが何も知らないような笑顔で梨華を見る。

(気のせいだよね…?)

「ところで梨湖ちゃんは?」

沙絵子は梨華に聞く。

「今日は部屋に居ます。体調が悪いみたいです。」

梨華はそういい沙絵子のコートを取る。

「梨華ぁー!」

「!はぁい!…すいません沙絵子さんちょっと行ってきます。」

梨華は急いで呼ばれた方向を言った。

「お前…男上げたな?」

浩輔は梨華を睨み言った。

「!…それは…」

「なんで上げるんだ!勝手に家に上げるなと何度言ったらわかるんだ!!」

浩輔はそういい皿を梨華に向かって投げた。

「ご…ごめんなさい…!!」

梨華はうずくまり言う。

「お前はどうして俺の言うことを聞かないんだ!!!
そんな風に育てた覚えはないぞ!?」

浩輔はそういいタバコに火をつける。

「や…ご、ごめんなさいっ!!お父さんごめんなさいっ!!!
もうやらないからっ…!!許してっ!!」

梨華はそういい後ずさる。

「許す…?何言ってるんだ?悪い子には罰が必要だろう?
ほら、これが梨華の罰だよ。」

「いやぁ…!!!」

――――――――――

「ぐすっ…うっ…」

梨華は腕の無数の火傷の跡を抑え泣く。

「うるさい。」

浩輔はそんな梨華を睨み低い声で言い放つ。

「っ…ううっ…」

「うるさいって言ってるだろう!!!もう一回やられたいのか!?」

浩輔が言うと梨華は首を横に振り二階に上がった。

(どうして…なんで私ばっかり…いやだ…もういや…!)

梨華は布団の中でそう思いながら泣いた。

(私ばっかり…なんで…)

その夜から梨華は家に帰らなくなった。