休み明け。


土曜日も日曜日も、


バイトをお休みした。


電話をすると、店長は、


丁度休まないかなって思ってたから、


丁度いいなんて、珍しく


優しいことを言ってくれた。


嬉しくてお礼を言う所なんだけど、


素直じゃないあたしは、


気持ち悪いと言ってしまい。


それでもなぜか店長は、


俺にだって気持ち悪い日くらいある。


なんて、またしても珍しいことを


言ってくれた。





「おはよう、妃名子」




「あ、おはよう」




先に来ていたあたしの席に、


急いで駆け寄る鳴海。


聞かなくても分かる、


そのあたしを心配している顔。





「大丈夫なの?」




「うーん、大丈夫じゃないけど」




「何あったの?」





あたしの前にしゃがみ込み、


事情を尋ねてくれる。


何から話そう。


そう考えていた時。


廊下がざわつき、


教室内も少しうるさくなった。


すぐに分かった。


朝陽が来たということに。






「吉川」





すぐ傍まで来て、名前を呼ぶ。


朝陽には恥ずかしい所を見られて


いるから、気まずい。





「何?」




「ちょっといい?」




「今鳴海と話してるから、無理」





別に朝陽に何も話すことはない。


むしろ知られたくない。


知って、朝陽がどうこう出来るような


ことじゃないし。





「この間のことなんだけど」




「そのことなら、話すことないよ」




「話すことあるだろ」





いつもなら、笑って終わるのに。


なぜか今日の朝陽は、一歩も引かない。


変な朝陽だな。


そんな風にしか考えていなかった。





「伊藤、こいつ借りていい?」




「え、借りる?」




鳴海はぽかんと口を開け、


あたしを見つめた。


誰も何も返事をしていない。


なのに、この男は。






「来て」




「は、何、ちょっと朝陽っ…」





あろうことか、あたしの腕を掴み、


周りの目を気にせず、


引っ張って教室を出た。


力が強くて振り解けず、


仕方なく着いて行く。


色んな教室から、悲鳴にも似た


声が響いて来る。


そうなるよね、大人気の朝陽が、


あたしなんか連れてたら。






「朝陽っ…、どこ行くのっ」




何を言っても離さず、


どんどん歩いて行く。


もう朝のHR始まっちゃうのに。





「朝陽、早いってば…」





やっと歩みを止め、


着いた場所は体育館。


朝陽はあたしを連れ、


バスケ部の部室へと入って行った。





「もう…どうしたのよ」





部室のドアをバタンと閉め、


明らか機嫌が悪そうな朝陽は、


部室にあるベンチに座りあたしを


何か訴えるように見つめた。


あたしはその訴えが読めず、


沈黙を突き通した。