不倫って、何でするのって。
そう思ってた。
結婚するって、
そんな簡単なことじゃない。
好きじゃない人と、
結婚する人なんていないし。
他の人を好きになったら、
結婚相手に失礼だし、って。
絶対お父さんのようには、
なりたくない。
私のお父さんは、
不倫をして、
お母さんと離婚した。
それからお母さんは、
朝も夜も働くようになって。
だから私は、
絶対不倫なんてしない。
子どもながらにずっと、
そう思ってた。
「綺麗だよ」
広いベッド。
暖かい温もり。
少しの月明かりが照らす、
この場所で。
「ん…っ、」
甘い息を漏らす。
声を抑える私に、
可愛いと囁くこの言葉に、
顔を赤らめる。
「ふっ、っ…」
優しいキスを受け入れる。
大きい手が、あたしをかき乱す。
愛されてるって。
毎回そう実感出来るのは、
この人が甘く優しく囁くから。
「愛してる」
それを聞く度に、
私は涙を流す。
何でかは分からない。
嬉しくて。
恋しくて。
寂しくて。
「私もっ…」
微かに微笑むこの人は、
世間でも有名な建設会社のお偉いさん。
といっても、まだ28歳。
役職は、はっきり知らないけど、
現場を仕切るくらいの立ち位置では
あると思う。