あの日以来少女は1日も欠かさず少年の元へ会いに行った。

「玉藻にーちゃ!」

「あぁ、来たんだね。さぁ、今日はどんなことがあったんだい?」

少女より二、三歳上であろう容姿の少年だが学校にも街でも見かけることはなかった。

しかし、そんなこと少女にはどうでも良かった。

少年がこの森で少女と話して遊んでくれる。
それだけの関係……

だけど、どんな友人よりも少女にとってはかけがえのない存在となっていた。

「君に見せたい物が在るんだ。さぁ、手を。連れて行ってあげよう」

いつも穏やかな少年らしくない年相応の明るさを見せ急かすように立たせた。

「目を瞑っていて。それまでちゃんと僕が引っ張って行ってあげるからね」

「うん!」

あれからどの位歩いただろうか?
足の裏に感じていた堅い木の感じがなくなり柔らかい草地に出たような気がした。

「さぁ、目をお開け?」

少女はゆっくりとその眼を開くと其処に広がっていたのは端が見えない程の広大な花畑が色々な花を咲かしていた。