「うーん。このままじゃ、厳しいんじゃないか」


「そうですか……」




 二者面談、進路希望調査。
 けっこう自信はあったのに、この前のテストの点数は、希望高校までは届かなかった。
 



「どう思う。ひとつレベルを下げれば楽に入れるんだが」


「はあ……」




 受験生になって、希望している高校は厳しいと言われ続けていた。だから前みたいには落ち込まなくなったし、勉強のことで頭をいっぱいにさせることも少なくなった。


 けれど、こういう面談のときに言われると、へこむ。





「あん、お帰りー。どうだったー?」

「下がった」





 教室に戻るとかすみたちがいて、けらけらと笑った。

 かすみも、知子も、沙希ちゃんも、流華も、受験に対しては関心がなく、勉強しなくても入れるところを受けるみたいだった。




「まあ、下がっても死なないからだいじょうぶだよ」

「ぱーっとあそぼ」





 いいな。

 



 わたしも、そんなところを受ければ、こんなことで頭を悩ませなくてもいいのかな。





 わたしも、みんなみたいに、何にも気にせずにカラオケに寄りたい。






 家に帰って、コートを脱いで、暖房をつける。

 いつもと変わらない。


 もう十一月だ。受験は、刻々と近づいてきている。


 そのたびに焦ってしまって。
 落ちたら、はずかしいと思ってしまって。



「むりだよ」



 わたしは周りからは、ものすごく出来ると思われている。
 定期テストの点数の取り方は得意なんだ。
 本当は、そんなにできないのに。
 みんながわたしが進学校に行くと思っている。




 思っていないのは、わたしだけだ。





 すぐに勉強を始めなければ、と、カバンから参考書を取りだす。


 やりたくない。
 眠いし、
 だるい。

 



 もっと勉強ができたなら


 
 いや、勉強ができなかったなら






 こんなに嫌な思いはしなかったのかな。




 そう思ってベットに倒れ込む。




 わたしはこれからどうすればいいんだろう。






 どんどん悲しくなってわたしは泣いた。









 優しくしてほしい。優しくしてほしい。













 優しい人に会いたい。