――――…


時間とはあっという間に過ぎるもので。
まさに今。
草野君と約束した放課後になろうとしている。


ドキドキしながら私は自分の席について、手を握り締めた。
その肩をぽんと誰かが叩く。

「あやめ、緊張しすぎ。
肩がちがち」

そうやって、葉月は笑いながら前の席に座る。


「…そりゃ緊張する、でしょ」

「はは、まあ、頑張って」


震える声を出す私をまた、笑うと薄情にも葉月はさっさと帰って行った。

出来れば草野君が来るまで喋っていたかったのに。
…葉月の事だから、そんな私の事もわかっていたはずだ。


大きく息を吸い込んで、落ち着かせようとするが、ドキドキは止まらない。


「あー、一之瀬」

ふいに後ろからかかった声に、心臓が飛び出るかと思うぐらい体が跳ね上がる。
小さく多分、声も出してたと思う。
ヒッとか、ヒャッとか。

草野君には聞こえていない…はず。


ゆっくりと振り向くと、思っていたよりも近くに立っていた草野君。
それにまた体が跳ねそうになる。

どうにか、跳ねる寸前で止まることが出来たけど。