「青柳ーっ。悪いけどこれ、研究室まで運んでおいてくれるか?」
「……分かりました」
先生の前ではそう返事しつつも、心の中では『はぁ、またか』と、ため息をつく。
まったく……先生も、私ばかりにこんなこと頼まないでよね。
私、青柳 穂花(あおやぎ ほのか)。
20歳の、大学2年生。
2限目の授業が終わるなり、准教授の瀬川先生に、今日提出の課題レポート(受講生全員分)を先生の研究室まで運ぶように言われ、ただ今ほんの少しイライラしてます。
この授業は少人数制だから、レポートの枚数自体はそんなに多くなくていいのだけれど。
私は先生に目をつけられているのか、先生はこういった頼み事を度々私にしてくる。