ケータイ小説 野いちご

シンデレラの一族

中1、晩夏

◇◇◇【8月3日】


それは、あまりにも突然の電話だった。




『やっほーー!瑠璃おはよ!!』

電話を切りたくなるようなハイテンションで携帯にかかってきたそれは、お兄ちゃんだった。

11時頃、決しておはようの時間ではない気がするのだが。


「……なに」

『わー!ご機嫌ななめだねぇー。
俺は瑠璃がこの間イキナリ帰っちゃったから寂しくて仕方なかったってのにー』

ハッ、と我にかえる。

そうだ、半ば忘れかけてたけれど、私は全てを放り投げて逃げてきたのだ。
止めはしなかったものの、お兄ちゃんは大変傷ついたに違いない。

「…ご、ごめん…」

『あ、お兄ちゃん怒ってないからね!?
騙したのはこっちだし、むしろ害はこちらにあるんだけどー…瑠璃は優しい子だね♪』

「……」

そうだよなぁ、元はと言えばお兄ちゃんたちが仕組んだんだよなぁ
謝ったの返せって感じである。

『で、瑠璃ちゃんや。
本題なんだけど』

うぉっほん、とわざとらしい咳をして。


『瑠璃の私物は預かった!!
返してほしくば村まで取りに…いや、お兄ちゃんの胸の中まで取りに来い!!!!』



「……」

なんだ、ノリについていけないのだけど。

『ほらほらー?ぱんつとか置きっぱだとお兄ちゃんの私物にしちゃうよー?』

「へ、変態…!!」

なんて男だ。

「…お兄ちゃん、まさかそれ…千恵とかにもやるの?」

『んにゃー?朝隈さんのお嬢さんと紺野さんのお嬢さんは宅配便したー。
あとなっちゃんも寮で過ごすみたいだから送ったー』

なぜ私には送ってくれないの!?
お兄ちゃん下心丸見えだよ!


『まあ洗濯物とかは東西が洗濯してくれてるから安心していーよ
お兄ちゃんぱんつとか見てないから。ちゃんと順序踏むつもりだから』

なんの順序だよ。

『とにかく早いうちに取りにおいで?
こんどはなんもしないから』

「はあ…」

『じゃーね!早くしないとお兄ちゃん食べちゃうからね!』

何を食べるつもりなんだこの変態は。


がちゃりと切れて、ため息をついて。


ブルブルと音楽と共にまた通知を知らせてきた携帯に、慌てふためく。

あんにゃろー、まだ用があるのか。


「なんなの変態『白龍瑠璃さんの携帯ですか?』



ち、違う人だった。
変態って言っちゃった…。


真っ赤になって「はい…」と答えると、電話の向こうは信じられない言葉を吐いた。




『山本美夜さんが倒れて当病院にいます。
事情をお話ししたいので来てくださいませんか』と。




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