ケータイ小説 野いちご

シンデレラの一族

中1、夏
おそろいとの出会い



「お、おそかったっ…伊織さま!」


小池さんの彼を怒る声が、意識の遠くの方で聞こえる。


「バカ!なにしてんの!」

「わ、捺!なんでそんなに怒ってんだー?」

「いいから離れなさい!バカ!…ったく、いっつも暴走すんだからっ!あとで皆に叱ってもらわなきゃ」

仲が良いのか、背伸びして耳を引っ張って私から離れていく。



それを呆然と見つめるしかなかった。



「…そ、んな」


ようやく喉が動いて、言葉が落ちた。

それに反応した彼は、やはり柔和に笑って。


「んー、信じられない?」


「当たり前でしょ?手順を踏んでって言ったじゃない」

「やあ〜…ごめんね、なっちゃん」

悪気のない無邪気な笑顔に気圧されたのか、ため息をつく小池さん。


そして、私に歩みよって――屈んだ。


まるで従者のように、頭を下げる。



「な、に…」

「お帰りなさいませ、瑠璃さま」


変わった口調に寒気を覚える。

今までの小池さんとは違う、恐ろしいほど冷静沈着。


「おい、なっちゃん…」

「黙って、伊織さま。
私はシンデレラに仕えるものです」


「…シンデレラって…」

「――この村の、独りぼっちのお姫様のことでございます」




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