何かおかしい二人






本日も、最近恒例となっている残業にバタバタと動き回っていると、乾君が備品を貰いに私のいるフロアへやってきた。

「インクを貰いたくて。あと、プリンター用紙も」
「了解」

作業を中断し、乾君を引き連れて廊下を行き、鍵を開けて備品倉庫と呼ばれている十畳ほどの狭い部屋に入り込む。
中は下から上までびっしりと物の詰まった棚が、壁一面と間に三列。
その中からインク関連の棚を覗いて、乾君の欲しがるカラーをいくつか渡した。

「ありがとうございます」
「あ、あと用紙だっけ」

「はい」
「じゃあ、これね」

渡した数量と品物の確認をしてもらい、チェック用紙に名前を記入してもらい、書かれたフルネームを見た。

「乾君て、聡太っていうんだ」
「はい。碓氷さんは、沙穂ですよね」

「え。あ、うん。よく知ってるね」
「入社の時に配られたパンフレットで見たので」

そうなんだ。
よく見てるな。

というか、よく覚えてたよね。
記憶力がいいのかな。

「本社に移動そうそう、忙しくてごめんね」
「碓氷さんが謝ることじゃないです」

「あー、うん。まーそうなんだけど。一応本社にいる人間としては、新人が急にフル稼働で働きまくっているっていうことに、心が痛むのよ」

だって、辞められちゃったら元も子もないのだから。
新卒採用の準備だって、意外と大変な労力と時間を使っていたのよ。