三月…七年ぶりに実家へ戻って生活していた。

先月の末に、いきなり帰って来た私を、父も母も弟も、何も言わず迎えてくれた。
お正月に帰省した時よりも、体重は五キロも減って、生気の無い様子でいるのに、
誰も、何も、聞かなかった…。

何も聞かれないのは、返って辛かった…。

息が詰まりそうな苦しさがあって、そこから逃げ出したくて、バイトを始めた。
原付バイクで十五分位の所にあるコンビニ。
たった四時間程度だったけど、家族に気を遣われながら生活するよりマシだった。

コンビニの仕事は簡単。商品を陳列して会計するだけ。
たったそれだけの事なのに、今の私には難しかった。

立ち直っていない私には、笑顔が上手く作れない。
愛想良く振る舞う事は、もっとできなかった…。

その日も同じ。
仕事上がりまで、あと一時間って頃まで、私は黙々と仕事をこなしているだけだった。
ところが、大粒の雨が降り出して、店内は雨宿りをするお客で賑わい始めた。

次から次へ出入りするお客は、少額の買い物をするだけ。
その相手すらも上手くできなくて、私は重い溜め息をついた。
笑えない私には、この単調なレジの仕事が、一番長く感じられる。
早く上がる時間にならないだろうかと、つい、思ってしまった……。


そんな中、髪を一つに結んだ男性が入って来た。
私のいるレジに並び、

「二十番二つ」

タバコのナンバーを短く言うと、小銭を準備し始める。
後ろを振り向き、棚からタバコを取りながら感じる視線。
気づいていたけど、気づかないフリをして向き直った。

「……あっ!」

男性の声に、顔を上げた。