砂緒里からTELがあったのは、同窓会の一週間後だった。

「大事な話があるから」

呼び出されたのは、例の「とんぼ」。
大事な話をするのに居酒屋なんて…と思いながら中に入ると、奥のテーブルにいた彼女が、立ち上がって手招きした。

「ゴメンねー、わざわざ来てもらって…」

彼女のセリフに、

「そんな事ないよ」

返事して気づいた。

「あれ⁈ 平井君…⁈ 」

同じテーブルについている彼を見て、

「平井君も呼ばれたの?」

椅子を引いて尋ねた。
二人並んでる姿を見て、一体どういう事なのと聞こうとしたら、砂緒里が赤面して言った。

「…今度、結婚するの…私達…」



「………ええっ⁉︎ 」

暫く間が空いたのは、突然すぎて、声が出なかったから。

「つ…付き合ってたの…?い、いつから…?」

砂緒里からそんな話、聞いたこともなかったのに。

「高一の夏…くらいかな…」

思い出すような顔で、砂緒里が首を傾げた。

「 高一の夏⁉︎ 」

ざっと、頭の中で計算。
今が二十七だから、高一…ってことは……

「まさか…十一年も付き合ってたのっ⁉︎ 」

聞き返す私に、肩を竦めて笑う。

(ウソ…ホントに…?)

「ビックリ…おめでとう…」

拍子抜けした。

「ありがとう」

仲睦まじく笑っている。ホントに結婚するんだ。

「それで、大事な話と言うのはね、花穂にお願いがあって……」

結婚する人達のお願い。嫌な予感がした。

「披露宴で、スピーチ、してもらえない?」

「スピーチ⁉︎ 私が⁉︎ 」

頭の中、一瞬で真っ白になった。
スピーチどころか、私は……

「むりっ‼︎ むりむり‼︎ 絶対むりっ‼︎ 砂緒里知ってるでしょ⁉︎ 私がすごい上がり症だって!絶対できないって!」

いくら親友だからって、それだけは勘弁してって頼んだ。

「そこを何とかお願い!友人代表として…!」
「僕ら、自分達の事をよく知ってる人に頼みたいから…」

平井君まで無理言う。とんでもない。

「ホントに勘弁して!人前で話すなんて、絶対できないから!」

特に一人でなんて、まず無理だと言いかけた所に、店の戸が開いて…。