家に帰ると、電気はついたままだった。

靴をゆっくりと脱ぐと、後ろから廣クンも入ってきた。



握られた手のひらは、ほんのり冷たい。



「…あの、お父さん」

「……おかえり。それと君は、幼い頃の…」



お父さんは廣クンを見て、懐かしそうにしていた。

廣クンが手のひらを少しきつめに握った。



「貴方にお話があって来ました。外国に行くそうですね」

「あぁ。そうだよ」

「…それを聞いて、俺は彼女を離したくないと思ったんです」

「それで?」




「妃鞠さんを、俺のお嫁に下さい」





そっとお父さんを見ると、どこか寂しそうで、複雑な表情をしていた。