「あの餓鬼、誰だ?」

「さあな。副長と試合すんだってよ。まあ、副長が勝つだろうけどな」

 道場内がざわつく中、そんな声が聞こえてきた。

 ……むかつく。

「君たち、よければ私と試合しませんか?」

 すぐに終わらせてやるよ。

「いいぜ」

「やってやるよ」

 単純だな。

「土方さん、すみません。先に彼らと試合してもよろしいでしょうか?」

「構わない」

 木刀でやるんだし、力の加減とかも試しておきたい。やりすぎると後々面倒だし。

「1人ずつやるのは時間の無駄なので、2人同時に来てください」

 いつものに比べたら余裕だろ。

「はい、木刀」

 沖田が木刀を渡してくれた。

 ……っ!

「……ありがとうございます」

 私はそれを受け取り、構えた。

 気配がないよな、あいつ。まだ油断してるってことだよな。もっと気を引き締めないと。

「試合、始め!」

 その合図とともに、2人が一気に正面から向かってきた。

 2人いるんだから挟み撃ちでもなんでもすればいいのに。そんなこともわかってないなら戦う必要はないか。拍子抜けだ。

 その攻撃を避け、彼らの木刀を即座に弾いた。

「な、に……」

「勝者、神田」

 こんなにあっさり終わるとは思わなかったのか、彼らはまだ状況が理解できていないらしい。

 あれだけの口を叩くから強いのかと思ったけど、そうでもないな。

「君たちにいいことを教えてあげる。正々堂々真っ向から向かっていっても相当な実力がなければ死ぬ。相手が自分より勝っているか劣っているかもわからない相手に真っ向から向かうのは間違ってる。そういうのが武士としての理想の戦い方なのかもしれないけど、現実はそんなに甘くない。自分や仲間の命がかかってるんだから。求めるのは勝利。生きることのみ。2人いるんだから挟み撃ちでもなんでもして確実に相手を殺せ。殺すこと以外考える必要はない。同情なんてものは以ての外だ。自分が生きることだけを考えてればいい。私があなたたちの敵なら、今頃あなたたちはここにはいない」

 はあー。とんだ思い違いだったな。戦闘中は、相手を殺すことだけ考えてればいいんだよ。