〈謎人A side〉


「うらぁ!!」


目の前の強面のお兄さんが殴りかかってくる。


何をしたかなんて、ただ喧嘩をふっかけられただけ。


何もしてない。


だが、この光景は至極当たり前の日常。


ここ__夜の繁華街にとっては。


男の拳は風を切り、此方に向かって来るが


「残念、当たらないな」


俺には当たらない。


「くそぉっ!」


何度も何度も拳やら足やら使って攻撃してきても擦りもしない。


俺は悔しそうに顔を歪める姿が好き。


今いるコイツもそうだけどそろそろ


「もっと楽しませろよ、飽きちゃった」


同じことしかしないコイツはつまらない。


「何っ!?」


俺は繰り返し出される拳をゆらりとかわし、男の懐に潜りこむ。


「ごめんね〜、暇潰しに付き合ってくれてどうも」


そして…男の鳩尾に拳を入れた。


「…カハッ」


一発入れただけなのに、少量の血を吐いて倒れる男。


簡単に倒れちゃったか〜。


もうちょっと粘ってくれても良かったのに。