「綺麗なは葉月にヤキモチを焼いてるんじゃよ」

「そろそろ離れてください」

高尾に手を引かれ人混みを抜けてとある神社に辿り着いた。

「はっ。いい加減離してください!」

私は高尾の手を振り払う。
すると高尾は何も言わずに話をし出した。

「ここはな、稲荷神社。ここに来るまでは桜が満開だったじゃろ?だが、ここのお稲荷さんの桜は一生咲かねぇんだ。いや、咲けねぇのかもしれねぇ。だからわしがいつか咲かせてみせるんだ」

一瞬だけ、高尾に惹かれてしまった自分がいたが、着物を渡すことで頭がいっぱいだったわたしはすっかり聴きたいことを聞くのを忘れていた。

「あの、高尾さん?1つお聞きしても?」

「ん?なんじゃ」

「何故、あの日初めて合ったのに何故名前を?」

「あ。あぁ気になるよな。アンタ似てるんだよ。昔合った友に。そやつが死ぬ前に江戸のどこかに妹が居ると聞いて訪ねてみれば...驚いた。瓜二つ。」

昔あった友?
意味が解らない。

「アンタ葉月じゃろ?」

「ええ」

「よかった。間違ってなかった。アンタの兄さん葉蓮からアンタを護れって云われてんだ」

確かに生き別れた兄は葉蓮と言う名だ。
でもなぜ兄はこの人に?

「でも...食っちゃいけないなんて聞いてない」

高尾は目付きが変わったように目を薄めてこちらを見る。


後ろから肩を、持たれ首筋をすんっと嗅がれる。そして湿った感覚が首を麻痺させたかと思うと首筋に痛みを感じる。

「痛っ..たか..おさん.!?」

「血....ちょう..だい」

「え.....」

「わしにもっと..」