「___起きたね、詩鳥」


瞼を開くと、彼の顔が上にあった。


「....ここは?」

「流歌の家」

「....へっ!?」


徐々に意識がはっきりしてきて、自分が倒れたことを思い出す。


「相瀬先輩の....ど、どうしようロボットくん!!」

「____どうしようって、何かしたいの?詩鳥」

「なっ!何か!?」

「____あぁ、じゃあ....流歌が何時も『使用』してる如何わしい本の位置とか」

「マスター権限行使、No.0811___止まれ」

ロボットくんの動きが止まり、完全に停止する。


「ふぅ...なんとか俺のプライドは守られた」

「い、如何わしい....使用....」

「....ちょっと、遅かったか... !」












「えっと、ロボットくんはなんて呼べば良いかな....」

「____『愛音』でいいんじゃないの?」

「それは、ちょっと....」

「AIだし、アイとか適当で」

「____やだ、安易すぎ」

「贅沢いうな!ぽんこつ!」

「____僕の人工知能モデルは」

「わかったよ!人工知能の癖に贅沢なやつだ」

大きくため息をつく先輩。

懐かしくて、少し笑ってしまった。








相瀬先輩は高校のロボット研究部の部長を勤めていて、有名な人らしく、よく新聞に載っていた。

頭脳的に、外国の学校に行けてしまうレベルだったのに、地元の一般高校に入ったのは『ここじゃなきゃ駄目』だったらしい。

周囲の人たちは、先輩のことを『変わり者』とか『1000年に一度の天才』とか言っていたけれど、実際はロボットが好きで好きで堪らない、普通の先輩だった。

そんな相瀬先輩と私なんかが何故、こんなに親しいのかというと、それは彼が愛音くんの従兄だったからだ。

二人は全く似ていないように見えて、実は結構色んなところが似ていたりする。

だからか、たまに兄弟喧嘩のようなことをしていたけれど。




「....相瀬先輩、ロボットくんのナンバーって何でしたっけ?」

「ん....0811、だけど?」

「...811」

鞄から楽譜用紙を取り出して、隅っこに『0811』と書いてみる。





「....811....8ll...hall....『ハルくん』、なんて...どうかな? 」